一級建築士事務所 株式会社 米田横堀建築研究所 / 群馬、埼玉、栃木、長野、軽井沢にて、木造住宅、店舗、クリニック・医院の設計を行う設計事務所

研究日誌

2021.04.30 建築研究

草屋根のこと

我が家の草屋根の家を建て5年ほど暮らしました。

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屋根に草が生えていて、薪ストーブがあり、土間があり、玄関が無い、それだけのシンプルな家です。
さして特徴の無い家ですが、強いて言えば草屋根は特徴的なのかもしれません。
設計当初、気持ちの良い草の香りの原っぱで寝転がってビールが飲みたいという欲求の実現のため、妻には「環境のため」「建築家としての実験のため」などと説得をして強行しました。
なかなか屋根でビールを飲んでいる時間のない生活を送っていますが、結果として、最近では妻も屋根にセリやワラビ、各種ハーブ、イチゴ、花類を植えるようになり受け入れてくれたのだと勝手に安心しております。
夏の日射遮蔽効果は間違いなくあるようで、都内からその分野の専門家が見に来られた際に夏の夕方の帰宅時、空調無しで一日経った時の室温を伝えたところ、一般の家と比べて約7度室温を下げる効果があると言われました。
確かに我が家の居間にはメーカー規定の半分程度の能力のエアコンしかありませんが、問題なく冷えるのはその恩恵もあるのかもしれません。

先日、草屋根の下地の劣化具合を見てみました。

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草屋根の下地はシート防水、シームレスのステンレス屋根等がありますが、私の家ではコストの面も考慮し重量歩行用のシート防水を選択しました。
シート防水の対応年数は10年から相当持って20年かと思いますが、劣化の主な原因は紫外線です。
紫外線への暴露を防いでくれる草屋根はこの面でも有効なのではないかと設計当時考えた記憶があります。

土をどかして、防根材をめくると、防根材とシート防水の間に多少草の根が入り込んではいたものの、シート防水そのものは全く劣化が無い状態でした。
※写真手前や左は土を除去した防根材、軒先の三角にめくれて見えているのがシート防水です。

まだ5年なので暴露していても同程度のような気もしますが、草屋根によってシート防水が痛むような劣化は現段階では認められませんでした。

引き続き草屋根を楽しみつつ、環境効果や経年変化を探っていきたいと思います。

横堀将之